とい、つづける、ふたりへ ― あたらしい、せかいへ、あゆむ、ひ
Luminus Archive学園のおく、理事長室のまえ。
おもたい木のとびらは、きょうは、しずかにしまっている。
まどから、はるのひかりが、さしこんでいた。
しるふぁは、とびらのまえにたって、ふかく、いきをすった。
うしろに、すこし、はなれて、セリア会長、ティナ、リヴィア、アリア、リュシア先輩、ノエル。
しるふぁは、ベッドから、おきあがって、すぐにここにきていた。
びょうしつから、ながいろうかをあるいて。
かいだんを、のぼって。
その、あいだ、しるふぁは——
ところどころ、ふらつきながらも、まっすぐ、まえをみていた。
セリア会長たちが、しんぱいそうに、あとにつづく。
「しるふぁさん。
むりは、——」
「いいえ、セリアさん」
しるふぁは、ふりむいて、しずかに、ほほえんだ。
「いま、いかないと、いけないんです。
そうしないと、また、——『じぶんが、わからない』、ところに、もどって、しまいそうだから。」
「だから、いま、いきます」
会長は、しずかに、うなずいた。
しるふぁは、とびらをつよく、コンコンと、ノックした。
すこし、ま、があった。
そして、なかから——
かすれた、けれど、しずかなこえがした。
「……どうぞ」
しるふぁは、しずかに、とびらを、ひらいた。
理事長室。
とびらが、うしろで、おもたく、しまった。
へやの、いちばん、おく、まどのまえに——
ながいぎん色のかみの、アウレリアさまが、しずかに、たっていた。
となりに、ルーナさま。
アウレリアさまが、ふりかえった。
しるふぁが、ふらり、と、たっているのをみて——
あわてて、まえに、すすもうとした。
しるふぁは、てのひらを、ちいさくまえにだして。
それを、とめた。
「——アウレリアさま」
しるふぁの、こえは、ふるえて、いた。
けれど、まっすぐ、だった。
「ひとつ、おうかがいしたい、ことが、あります」
「……しるふぁさん」
アウレリアさまの、目が、ふるえた。
しるふぁは、ははのてがみを、両手で、むねにだきしめていた。
「——巫女の、いのり、は」
「じぶんの、いのちの、ひかりを。
ルミネットに、すこしずつ、わたすこと、と」
「——巫女は、ふつうのひとよりも、はやくいのちがつきる、と」
「——それは、ほんとう、ですか」
アウレリアさまが、ちいさく、いきをのんだ。
うしろで、なかまたちも、はっ、と、いきをのんだ。
アウレリアさまは、しばらく、しるふぁを、みていた。
ルーナさまが、しずかに、まぶたを、ふせた。
そして、アウレリアさまは——
すこし、ふるえる、こえで、しずかに、こたえた。
「……どこで、それを」
「——ははの、てがみに、かいてありました」
しるふぁは、てがみを、すこし、もちあげて、みせた。
「おばあちゃん、が、わたしてくれました。
おかあさんが、ずっと、ずっと、まえに、——
わたしに、あてて、かいて、おいて、くれた、てがみ、です」
アウレリアさまは、ながい、いきを、ついた。
そして、しずかに、うなずいた。
「……ほんとうの、ことです」
しるふぁの、ほおを、なみだが、つたった。
「ルーナさまも、——巫女、ですね」
「はい」
ルーナが、ちいさく、ほほえんで、うなずいた。
「わたしも、おなじみちを、あゆんでいます。
だから、わたしのてのひらは、いつも、すこし、つめたかったのです」
「巫女の、いのちと、ひきかえに。
ルミネットの、ふあんと、かなしみを、うけとめる」
「——それが、巫女の、ほんとうのつとめ、です」
しるふぁは、ぎゅっ、と、てがみを、にぎりしめた。
「——わたしの、ははも、そのいのりで、いのちをちぢめたんですね」
「はい」
ルーナさまの、こえも、ふるえた。
「——あなたの、おかあさまは、わたしの、たいせつな、なかま、でした」
しるふぁは、しずかに、なみだを、こぼした。
しるふぁは、ふかく、いきを、ついた。
そして、すこし、まよって、から——
かおを、あげた。
「アウレリアさま」
「はい」
「もういちど、——
わたしを、ルミネットに、いかせてください」
アウレリアが、いきを、のんだ。
「——なにを、いって、いるのですか」
その、ひとみに、つよいいろがもどった。
「あなたは、いま、ようやくめをさましたばかり、なのですよ。
きおくも、もどっていない。
それで、また、ルミネットの、ふかいところに、いくなんて——
ぜったいに、ゆるしません」
しるふぁは、しずかに、くびをよこにふった。
「アウレリアさま」
「わたしは、——ルミネットの、いちばん、ふかいところで、
『もうひとりの、わたし』、と、はなしました」
「『もうひとりの、わたし』は、いま——
ルミネットのおくで、ひとりっきりで、いるんです」
「ながい、ほんとうにながいあいだ、——
ひとびとの、なみだを、たったひとりで、うけとめてきた、こ、なんです」
「わたしは、ははから、おしえてもらいました。
『ひとりで、せおわせない』ことを」
「だから、もういちどあって、——
あの子に、つたえたいんです」
「『わたしと、いっしょに、いこう』って」
「ばかなことを」
アウレリアさまの、こえが、つよく、なった。
「あのとき、あなたが、いって、どうなりましたか?
すべての『きおく』を、もっていかれたでしょう。
——いま、もういちど、いったら——」
しるふぁの目に、なみだが、たまった。
けれど、しるふぁは、まっすぐ、アウレリアを、みた。
「——わかって、います」
「でも、アウレリアさま」
「わたしは、もう——
あきらめたく、ないんです」
「『あきらめないで』って、エレーヌさんが、いってくれたんです。
ははも、いっていました。
『なやみつづけることが、『いきる』こと』だって」
「だから、わたしは、どうしても、いきたいんです」
しるふぁは、ふかく、ふかく、あたまをさげた。
「どうか——おねがいします。アウレリアさま」
アウレリアは、ながい、あいだ。
しるふぁを、みつめて、いた。
そして——
ぎゅっ、と、くちびるをかんで、つよくいった。
「だめです」
「あなたは、わかってない。
あなたが、いなくなったら——」
アウレリアは、ふるえる、こえで、いった。
「もう、いやなのです、しるふぁさん。
——だれかが、わたしのまえで、いなくなるのは」
しるふぁの目に、なみだが、あふれた。
「アウレリアさま……」
しるふぁは、ふみだして、アウレリアの、ほそい、てを、にぎった。
「ちがいます。
わたしは……」
「もうひとりのわたしを、ひとりに、しないために、いくんです。」
「アウレリアさま。
——あのとき、あなたにしたことを、もういちど、やりにいくんです。」
アウレリアは、ぐっ、と、いきをのんだ。
「あれは——」
「あのときと、おなじです」
しるふぁは、しずかに、いった。
「だから、おねがい、します」
そのとき
ころもが、すれる、ちいさな、おとが、した。
しずかに——
ルーナが、ふたりのあいだに、すすみでた。
「アリア」
ルーナの、こえは、おだやかだった。
「しるふぁさん」
「ふたりとも、すこし、いきをすって」
しるふぁと、アウレリアは、はっ、として、ルーナをみた
ルーナは、しずかに、ほほえんでいた。
しかし、その目つきには、ちからづよさが、あった
「アリア」
「あなたは、いま、しるふぁさんに、なにを、いっているの?」
アウレリアの、目が、ふるえた。
「……ルーナ、わたしは——」
「——あなたが、たすけたかった、リン、を」
「『もう、しなせたく、ない』、と、いっているんですよね」
アウレリアの、いきが、つまった。
「でもね……、アリア」
ルーナさまの、こえは、しずかだった。
「リンは、——あなたに『まもって、ほしかった』んじゃない、とおもうわ。」
「リンが、いちばん、うれしかったのは、
きっと、あなたが、となりで、ずっと、てをにぎってくれた、ことだった」
「あなたが、じぶんの、『つよさ』を、しんじてくれた、ことだった」
「リンは、いま、——
しるふぁさんを、まえにして、おびえる、あなたのことをみたら
——きっと、こう、いうとおもうわ」
ルーナは、しずかに、いった。
「『アリアちゃん。
——しるふぁちゃん、を、しんじてあげて』って」
アウレリアのめから、ぽろぽろ、と、なみだがこぼれた。
ルーナは、しるふぁの、ほうに、むきなおった。
「しるふぁさん」
「はい」
「ひとつ、——
やくそく、して、くださいますか」
「もし、ふかく、いきすぎて、これいじょういったら、もうもどれないかも、とおもったら——
ぜったいに、ふみとどまって、もどってきて、ください」
「ピコが、いる、でしょう。
わたしたちも、います。
そして、おかあさまの、てがみにもあったのですよね」
「——『じぶんひとりで、せおわない』と。
あなたのことば、ですよ…それを、わすれない、で」
しるふぁは、こくり、と、つよく、うなずいた。
「はい。
おやくそくします」
ルーナは、ふっ、と、ほほえんで——
それから、アウレリアのてを、しずかに、にぎった。
「アリア。
しるふぁさんを、しんじて、あげましょう」
「『まもる』のは、
——けっして、『あゆませない』、ことじゃない」
「『いってらっしゃい』と、やさしく、おくりだしてあげる、ことなの」
アウレリアは、ながい、あいだ、ルーナを、みていた。
しずかに、ながい、いきを、ついた。
そして、しるふぁに、ふりむいて——
「——いって、らっしゃい」
ちいさな、けれど、まっすぐな、こえで、いった。
「かならず——
もどって、きてね、しるふぁさん」
しるふぁは、えがおで、かえした。その目になみだを、うかべながら。
そして、ふかく、おじぎをした。
「はい!
——いって、きます!」
ルミネットの、ふかい、ふかい、おく。
しろい、つめたい、ひかりの、なか、しるふぁの、足もとにだけ、きん色のひかりが、しずかに、ともっている。
とおくで、ハープと、ピアノの、しずかな、二重奏のような、おとがひびいていた。
しるふぁは、ルミネットの、いちばん、おく、まで。
ひとりで、おりていった。
きょうは、ティナも、リヴィアも、いない。
アリアも、ノエルも、リュシア先輩も、いない。
それでも——
むねのペンダントから
みんなのこえが、たしかに、つたわってくる。
『しるふぁ、いつでも、もどってこいよ』
『しるふぁさん、わたしたちは、ここで、まっています』
『——おまえに、まかせる』
『きおくがなくても……
いっしょに、いるよ』
『あきらめないで、しるふぁさん』
しるふぁの足もとのひかりが、すうっ、と、ひいていく。
そうして——
ルミネットの、いちばんおくの、ひかりのまんなかに、たどりついた、しるふぁが
きがつくと——
めのまえに、もうひとりの、しるふぁが、たっていた。
すこしうつろな、しずかな、目。
ながいしろい、ひかりのなかに、ぼおっと、うかぶように、たっている。
『……しるふぁ』
もうひとりの、しるふぁが、しずかに、ほほえんだ。
『また、きてくれた、のね』
「——うん」
しるふぁは、しずかに、ほほえみかえした。
「あなたに、つたえたいことが、できたの」
『……どうぞ』
「あなたが、まえに、いったこと、
わたし、おもいだしたの」
「『あなたのまえにいた、ひとのなみだ』
『そのまえのひとの、なみだ』
『そのまた、まえのひとの、なみだ』
——『ぜんぶ、わたしが、うけとめて、ここにいる』、って」
『……うん』
「——みせてくれない、かな?」
「あなたが、せおってきた、ものを」
『……いいの?』
「うん」
しるふぁは、こくり、と、うなずいた。
「でも、——わたしが、せおいたい、わけじゃない。
このまま、あなたに、せおわせつづけたく、ないから」
『——わかった。』
もうひとりの、しるふぁが、しずかに、てをのばした。
そして、しるふぁの、ひたいに、ふれた。
しるふぁの、まわりのせかいが、しずかに、よこにひらいた。
さまざまな、じだいの、いずみ。もりの、なか。おちばの、ふぶき。ふるい、ほこらのろうそく。しらない、まちなみ。
とおくから、たくさんの、いのりのこえが、おりかさなって、きこえてくる。
しるふぁの、まわりに、ひかりのまどが、いくつも、いくつも、ひらいた。
その、ひとつ、ひとつ、に——
ちいさな、巫女たちの、すがたが、あった。
はじまりのまちで、いずみのふちで、ないていた、エレーヌ。
そのあと、ひかりに、いのりをささげ、わかくして、しずかになくなった、まいごの巫女。
あらしのよる、ひとりで、ルミネットにおりて、もどってこなかった、いしのつよい、巫女。
——そして、そのなかに、
ひとりの、巫女、がいた。
わかい、巫女が、しずかに、ルミネットのおくに、ひざをついて、いのっている。
そのそばに、もうひとり、ながいしろいかみの、巫女、がいる。
ふたりで、てを、つないでいる。
しるふぁの、心ぞうが、どくん、はねた。
「……おかあさん」
『——あなたの、おかあさまも、わたしのなかで、ねむって、いるよ。』
もうひとりの、しるふぁが、しずかに、いった。
『あなたの、おかあさまも、エレーヌも、——
ぜんぶ、ぜんぶ、ここにいる』
『そして、みんな、おなじように、なやんでいたの』
「『これが、ただしいのか』
『じぶんは、なんのために、いのっているのか』
『この、ふたんを、つぎのせだいに、わたしていいのかって。』」
『——でも、こたえは、なくて。
それぞれの、巫女たちは、
こたえを、もてないまま、わかくして、つきはてた』
『そして、その、なみだの、すべてを。
わたしは、ここで、うけとめてきた』
しるふぁは、こぶしを、ぎゅっ、と、にぎりしめた。
「——なんで、こんなことに、なったの?」
『それは……せかいの、ふあんが、おおきいから、よ』
もうひとりの、しるふぁの、目が、しずかに、しずんだ。
『にんげんの、こころは、もろい、から』
『だから、しるふぁ。
——わたしは、ここにいて、ささえる、しかない』
『これが、わたしが、ずっと、ながいあいだ、つづけてきた……こと。わたしのしめい、なの』
しるふぁは——
たくさんの、巫女たちの、すがたを、みた。
なきがおも、あった。
わらいがおも、あった。
やさしいえがおで、りょうてを、こどもたちにのばしている、すがたもあった。
そして……、そこには、わかい、おかあさんの、えがおが、あった。
しるふぁの、目から、ぽろぽろ、なみだが、ながれた。
「みんな……ありがとう。」
「ありがとう、みなさん。」
しるふぁは、ぺこり、と、ふかくおじぎをした。
「ここまで、つないでくれて、ありがとう」
「あなたたちがいたから、いまのこのせかいが、あるんだね。」
しるふぁは、もうひとりのじぶんに、ふりむいた。
「ねえ」
しるふぁは、しずかに、いった。
「わたしは、——
ここに、いるしかない、っていう、あなたのことばを」
「——うけいれられない」
『……しるふぁ』
「だって……」
しるふぁの目に、まっすぐなひかりが、もどった。
「ほんとうに、これが……『あなたのしめい』なの?」
「——ほんとうに、そうなの、かな?」
もうひとりの、しるふぁは、はっと、おどろいたように、めをみひらいた。
ペンダントが、つよく、しろく、ひかった。
「『だいだいの、巫女が、ひとりで、せおってきたから、これからも、せおうべき』」
「『ふあんがつきない、せかい、だから、だれかが、ささえるしか、ない』」
「——ほんとうに、そうかな?」
「『うんめい、だから、しかたない』」
「——ほんとうに、そうかな?」
しるふぁの目から、しずかに、なみだが、こぼれた。
「わたしは、ね。
おかあさんから、おしえてもらった、の。
『ほんとうに、そうかな?』って、まいにち、じぶんにきく、そうすることが——
いきる、ということ、なんだって」
「……もう、いちど、いうよ」
「あなたが、これからも、ここで、ひとりで、せおいつづけること、を——
わたしは、うけいれられない」
「わたしは、考えることを、やめない」
「あきらめない」
しるふぁは、つよく、いった。
「——ぜったいに、あきらめない」
『……しるふぁ』
もうひとりの、しるふぁの、まつげが、ふるえた。
『でも……、では、どうするの?
——わたしを、ここから、つれだして、どこに、つれていくの?』
しるふぁは、両手を、まえに、のばした。
そして、もうひとりの、しるふぁの、ほそいつめたい、そのてを——
しっかりと、つかんだ。
「わたしと、いっしょに、いこう」
「——あなたの、ちからが、ひつようなの!」
『え』
「——いまも、ふあんで、あふれた、このせかいは、つづいてる」
「だから、——
ふたりで。
いいえ、もっと、たくさんの、なかまといっしょに、
すこしずつ、わけあっていきましょう?」
「あなたの、しっている、ことを。
わたしたちに、おしえてほしい、の」
「ほんとうの、あなたを
わたしたちに、みせてほしいの」
「だれかが、ひとりで、ぜんぶ、せおわなくていい、せかいを——
わたしたちで、つくろう?」
『……でも、しるふぁ。
わたしが、ここをはなれたら——
ルミネットを、さいごにささえていた、このしくみが、うしなわれて、しまうのよ』
「うん」
しるふぁは、こくん、と、うなずいた。
「だから、ね、——
みんなで、いっしょに、かんがえよう?」
「みんなで、それを……すこしずつ、わけあっていくの」
「もう、ひとりに、せおわせない」
しるふぁは、もうひとりの、じぶんのてを、ぐっ、と、ひいた。
「いっしょに、いこう。
学園に」
「みんなに、あなたを、しょうかい、するの!」
『……しるふぁ。
あなたは、ほんとうに、——』
もうひとりの、しるふぁが、ぽろぽろ、と、なみだをこぼした。
『しるふぁ、あなたは——
とっても、ふしぎな……。いえ、へんな、こ、ね。』
「……へん、かな?」
しるふぁは、わらった。
「でも、——わたしは、おかあさんや、みんなから、こう、おしえてもらったの」
「『もう、ひとりに、しない』、って」
しるふぁは、もうひとりの、しるふぁを——
ぎゅっ、と、だきしめた。
つめたかった、もうひとりの、しるふぁの、からだが。
すこしずつ、すこしずつ、——
あたたかく、なっていった。
学園の、いりぐちに、はるの、ひるの、きん色のひかりが、さしていた。
とびらが、しずかに、ひらいて——
ふたつの、あしおとが、ひびいた。
しるふぁが、ふたたび、入り口の、とびらから、すがたを、あらわした。
ティナと、リヴィアが、まっさきに、はしりよった。
「しるふぁ——!」
しるふぁの、よこに。
しるふぁと、まったくおなじすがたの女の子が、すこし、はにかんだように、たっていた。
ティナは、ぴた、と、足をとめた。
リヴィアも、息を、のんだ。
「……えっ、しるふぁが、ふたり……?」
しるふぁは、にっこり、わらって。
「みんな」
「あいさつして、くれる?」
「この子ね
——きょうから、わたしの、まいごだった、いもうとです」
もうひとりの、しるふぁが、すっ、と、あたまをさげた。
「……はじめまして」
ちいさな、こえ、で、いった。
「わたし、ながいあいだ、しずかなところで、ひとりでいました。
ちゃんと、ひととはなしたことが、なくて。
——もし、しつれいがあったら……ごめんなさい。」
ティナの目が、まんまるに、なった
それから、ぱっ、と、わらった。
「——よろしくね!
わたし、ティナ!
あなた、しるふぁみたいに、しずかな、ところに、いたんだ!
じゃあ、わたしと、はんたい、だ!
そういう、こ、こそ、わたしが、つなぐんだ!」
ティナは、もうひとりの、しるふぁの、手を、ぎゅっ、と、つかんだ。
「ねえねえ、まずは、なにから、はじめようか!」
「えっ、ええっ……?」
リヴィアが、しずかに、ほほえんだ。
「——ようこそ。
あなたが、おねえさん、と、さいかい、できて、わたしも、うれしい、です」
アリアが、めがねを、ぐっ、と、おしあげた。
「これは——
学園に、——ぜんれいの、ない、編入生、だな」
「興味深い」
そのこえに、——
みんなが、ぷふ、っ、と、ふきだした。
しるふぁも、もうひとりの、しるふぁも、ちいさく、わらった。
それから、——
何にちか、すぎた。
中庭にも、教室にも、寮にも、はるの、すみきった、ひかりが、あふれて。
たくさんの、足音と、生徒たちの、こえが、ひびいていた。
しるふぁは、すこしずつ、——
きおくを、とりもどし、つつ、あった。
ティナが、まいにち、まいにち、まいあさの、リスの、しっぽの、ことを、はなして、くれた。
リヴィアが、けんを、もう、いちど、しるふぁに、にぎらせて、こんどは、ふつうの、れんしゅう、を、しずかに、おしえてくれた。
アリアが、めがねを、ぬぐいながら、しるふぁに、たくさんの、ほうこくしょを、よみあげてくれた。
リュシア先輩が、ふるい、ノートを、いっしょに、ひらいてくれた。
ノエルさまが、しずかな、ハーブティーを、いれてくれた。
セリア会長が、しるふぁの、ひたいに、てを、あてて、ねつを、はかって、くれた。
そして、もうひとりの、しるふぁ、は——
おどろくほど、はやく、学園に、なじんでしまった。
ティナと、いっしょに、まいあさ、中庭を、はしりまわって。
リヴィアの、けんの、れんしゅうに、ちらりと、まじって。
アリアの、けんきゅうしつ、に、こっそり、はいって、しずかに、本を、よみあさった。
リュシア先輩の、ふるい、もの、を、ふしぎ、そうに、なでて、まわった。
ノエルさまの、しずかな、ハーブティーを、ふたくち、で、のみほして。
セリア会長を、ふしぎな、目で、まっすぐ、みつめた。
そして、いう、のだった。
「みんな、——『せかい』、って、こんなに、おいしくて、わらえる、ものなんですね」
しるふぁは、それを、よこで、みて、——
そっと、ほほえんで、いた。
ある、ゆうがた。
こがねいろの、ゆうひが、しずかな、ろうかに、さしこんでいた。
しるふぁは、廊下を、あるいて、いた。
ふと、——
おくの、まどぎわに、アウレリアさまの、すがたが、みえた。
そのよこに。
ふるい、しっかりとした、トランク、が、ひとつ、おかれて、いた。
「——アウレリアさま?」
しるふぁが、こえを、かけた。
アウレリアさまが、ふりむいた。
しるふぁを、みて、ちいさく、ほほえんだ。
「……しるふぁさん」
「……それ、トランク、ですか」
「ええ」
アウレリアさまは、しずかに、いった。
「わたしは、——
学園を、さろう、と、おもうの」
「え」
しるふぁの、心ぞうが、どくん、と、はねた。
アウレリアさまは、まどの、そとに、めを、もどした。
「——わたしの、こころは、もう、ながい、あいだ、『ちから』で、ひとを、まもる、と、いう、みちを、しんじて、きました」
「あなたたちが、これから、ひらく、せかいは、わたしの、しんじて、きた、せかい、とは、ちがう、せかい、です」
「ふるい、ものが、まえに、たちつづけて、いれば、あたらしい、もの、は、——『ふるい、ものが、ゆるしたから、できる』、せかいに、なって、しまう」
「だから、わたしは、——
身を、ひこうと、おもう、の」
「あなたたちに、ほんとうに、『じぶんで、つくった』、と、いえる、せかい、を、のこしたい」
しるふぁの、目に、なみだが、もりあがった。
「……アウレリアさま」
しるふぁは、ふかく、いきを、すって——
そして、しずかに、いった。
「アウレリアさま」
「はい」
「——なにも、しなくて、いい、です」
アウレリアさまが、ふりむいた。
「まえに、でて、くれなくて、いい、です」
「ことばを、はさんで、くれなくて、いい、です」
「——ただ、わたしたちの、そばに、いて、ください」
アウレリアさまの、いきが、ちいさく、ふるえた。
しるふぁは、しずかに、つづけた。
「わたしたち、これから、なんども、まよう、と、おもう、の」
「『これで、ほんとうに、いいのかな』、って」
「そういう、とき、に。
——『わたしが、まもった、せかい』ではなく。
『わたしが、ながいあいだ、みつめて、きた、せかい』を、しって、いる、アウレリアさまに。
ただ、よこで、きいて、ほしい、の」
「『ほんとうに、そうかな?』、と、——
じぶんに、きいた、すえに、しか、つよくは、なれない、と、わたしは、しんじてる」
「ですから……」
しるふぁは、アウレリアさまの、ほそい、てを、そっと、にぎった。
「おねがい、です。
——学園を、さらないで、ください」
「わたしたちの、そばにいて、くださいませんか」
アウレリアさまは、ながい、ながい、あいだ、しるふぁを、みつめて、いた。
そして、ゆっくり、と——
かたの、ちからを、ぬいた。
「……しるふぁさん」
「あなたは、——
ほんとうに……」
なみだ、と、ほほえみ、が、ひとつに、なった、こえ、だった。
「『なにも、しなくて、いい』、なんて——
『そばにいて、ください』、なんて」
「——そんなふうに、いわれたら、——
わたしは、もう、どこにも、いけない、じゃ、ないの」
しるふぁは、ぽろぽろ、と、なみだを、ながして、わらった。
「……ごめんなさい」
「ううん。
ありがとう、しるふぁさん」
それから、何にちか、たって。
ある、はるの、あさ。
中庭は、はるの、まぶしい、ひかりで、いっぱい、だった。
しるふぁ、と、もうひとりの、しるふぁが、ベンチに、ならんで、すわって、いた。
ティナが、もうひとりの、しるふぁに、はなしかけて、いた。
「ねえ、なまえ、もう、きめたの?
ずっと、『もうひとりの、しるふぁ』、じゃ、たいへんだよ!」
もうひとりの、しるふぁは、すこし、はにかんだ。
「えーと、——
わたしは、しるふぁの、おかげで、ここに、これた、ので。
——『ティリア』、って、よばれて、いいですか」
「ティリア! かわいい! うん、ティリアね!」
リヴィアが、ふっ、と、わらった。
「——よい、なまえですね」
ティリアは、ちいさく、はにかんで、しるふぁの、てを、ぎゅっ、と、にぎった。
「しるふぁ、ありがとうね」
しるふぁは、ふっ、とわらった。
「ううん、こっち、こそ」
「あなたが、ここに、いてくれる、おかげで、——
わたしは、もう、まいばん、まいばん、『じぶんの、なかに、つめたいものが、ねむっている』、って、しんぱい、しなくて、いいんだもの」
「——ふたりで、はんぶんずつ、わけあえる、もの」
ティリアは、こくん、と、うなずいた。
「——うん」
すこし、はなれた、ベンチに。
アウレリアさまと、ルーナさまが、しずかに、すわって、ハーブティーを、のんで、いらっしゃった。
しるふぁは、そちらに、めを、やった。
そして——
ちいさく、てを、ふって、みせた。
アウレリアさまが、ふっ、と、わらって、ちいさく、てを、ふりかえして、くださった。
ルーナさまも、しずかに、うなずいた。
——なにも、いわない。
なにも、しない。
ただ、そこに、いて、くださる。
それだけで。
しるふぁの、せなかが、すっ、と、のびる。
ピコが、しるふぁの肩、で、おおきな、つばさを、ひろげた。
——ちいさな、しろい、とりだった、ピコ、が。
いまは、ふしぎと、すこし、おおきく、つよく、なって、いた。
『ルーメン・プライム』。
かつて、エレーヌと、ルミネットが、きざんだ、はじまりの、ひかりと、おなじ、ひかり、だった。
ピコは、しるふぁの、肩で、ぴぃっ、と、つよく、ないた。
そして、ティリアの、肩の、うえにも——
あたらしく、ちいさな、ふたごの、ような、しろい、とりが、すわって、いた。
ぴ、ぴ、と、ティリアの、ほおに、すりよった。
ティリアは、ぱあっ、と、わらった。
「……わたしにも、ね、——
ルミが、できた、の」
しるふぁは、にっこり、と、わらった。
「もちろん、できる、よ。
——あなたも、わたしたちと、おなじ、ひと、なんだから」
すうじつ、ご。
学園、ぜんたいの、あつまり、が、大ホールで、ひらかれた。
全校の、みんなが、しずかに、いきを、ひそめて、あつまって、いる。
まどからの、はるの光が、まぶしい。
壇のうえには、セリア会長。となりに、しるふぁ。すぐ、うしろに、ティリア。
しるふぁは、壇の、まえに、たった。
ちいさな、むねが、どくどく、なっていた。
でも。
——きょうは、『ほんとうに、そうかな?』の一ぽ、と、おかあさんの、てがみが、ちゃんと、ここまで、つれてきて、くれた。
しるふぁは、せすじを、のばした。
「みなさん」
ちいさな、けれど、はっきりと、した声。
「わたしは、——
ずっと、まえから、ひとつ、こころの、なかで、かんがえて、きた、ことが、あります」
「『かたないと、いみが、ない』
『いえがらが、ないと、みとめられない』
——そういう、しくみで、できて、いる、この学園を」
「『ほんとうに、そうかな?』、って」
しずかな、ホール。
「こたえは、すぐには、でなかった。
いまだって、ぜんぶ、でてる、わけじゃ、ない」
「——でも、ね」
「わたしは、ようやく、ひとつ、みつけた、もの、が、あるの」
「巫女に、なる、こと」
「——それは、ね。
だれかと、たたかって、かつ、ことでも。
いえがらで、えらばれる、ことでも、ない、んです」
しるふぁの、目に、ちからが、こもった。
「ルミと、いっしょに、こころを、よりそわせて。
こまっている、ひとの、てを、にぎる、こと。
じぶんに、まいにち、まいにち、『ほんとうに、そうかな?』、と、きく、こと。
——そして、ね」
「もう、ひとり、で、ぜんぶを、せおわなくて、いい、こと」
「——わたしは、それを、巫女の、つよさ、だと、しんじます」
「だから、わたしは、——
のぞむ、すべての、ひとに、巫女の、みちを、ひらきたい」
「決闘、いがいの、みちで、もたんの、しるしを、すこしずつ、いっしょに、つくりたい」
「——のぞむ、すべての、ひとが、じぶんの、ゆめを、めざせる、せかいを、わたしは、つくりたい、です」
「——『学びたい』、と、いう、その、きもち、を、わたしは、いちばん、たいせつに、したい」
「『これから、どう、いきれば、いいのか』、を、——
むり、と、あきらめないで、いっしょに、かんがえ、つづけて、いきたい」
ホールに、ぱらぱら、と、はくしゅが、ひろがった。
しずかな、ねっぽい、はくしゅ、だった。
セリア会長が、しずかに、たちあがった。
「——四光守、ぜんいんの、そうい、として、
学園改革を、すすめます」
リヴィアが、つづいた。
「とっけんかいきゅうせいど、の、はいしを、ていあん、します」
アリアが、めがねを、おしあげた。
「けっとう、いがいの、まなびのみちを、せいど化、する」
リュシア先輩が、ほほえんだ。
「——この学園の、そうせつじの、りねんは、ね。
『すべての、ものに、ひかりの、みちを』、だったの」
「げんてん、かえり、よね」
ノエルさまが、しずかに、いった。
「みらいの、ながれが、——あかるくなりました」
ティナが、こぶしを、たかく、あげた。
「みんなが、ゆめを、めざせる、ように、なるって、こと!
さいっこう、じゃん!」
ホールに、わあっ、と、あたたかな、わらいが、ひろがった。
ティリアが、しるふぁの、よこで、ぱっ、と、てを、たたいた。
「すごい、しるふぁ……!
——『せかい』、って、こんなに、はじまる、ものなんですね」
しるふぁは、にっこり、わらって、ティリアの、てを、にぎった。
ホールの、おくに、——
アウレリアさまが、ルーナさまと、しずかに、すわって、いらっしゃった。
なにも、いわない。
てを、あげる、ことも、ない。
ただ、しずかに、——
そこに、いて、くださって、いた。
しるふぁは、——
こくん、と、ちいさく、うなずいて。
アウレリアさまも、ちいさく、ほほえみかえして、くださった。
『みて、いて、くれる』、だけで。
しるふぁの、せなかは、いつでも、まっすぐ、のびた。
それから、少しずつ、学園は、かわって、いった。
貴族の、とっけんかいきゅうせいど、が、はいしされた。
上の、クラスと、下の、クラスの、区分が、なくなり。
すべての生徒が、おなじ、せつびで、まなべるように、なった。
巫女の、しょく、は、めいよしょく、と、なり。
いっぱんのひとびとも、しんかんや、巫女を、めざせるように、なった。
「研究」「ほうし」「そうぞう」「おしえる」「つたえる」
——いろいろな、ほうほうで、巫女としての、ちからを、みがける、しくみが、できはじめた。
ティリアは、——
へんにゅうせい として、しるふぁたちと、おなじ教室に、まいにち、かよいはじめた。
ふしぎな、まいごの、いもうとは、しるふぁが、知らなかった、たくさんのこと、を、知っていた。
そして、しるふぁが、知っていた、たくさんのことを、知らなかった。
——だから、ふたりは。
まいばん、ふしぎな、はなしをしては、わらいあった。
「ねえ、しるふぁ、——
あの、エレーヌさん、いまも、ときどき、わたしのところに、たずねてこられるの」
「ほんと!?」
「『あなたが、しるふぁに、つれてこられて、よかった』、って、わらっていってくださるの」
——もうひとり、の、しるふぁ、を、しずかに、うけとめて、いたのは。
ルミネット、と、ピコ、と、しるふぁ、と、——たくさんの、なかま、だった。
そして、なにより、すてきなこと、が、おきた。
すべての、ひとの、もとに——
ピコに、よくにた、ちいさなルミたちが、あらわれ、はじめた、のだ。
ルミネットが、——
しるふぁたちの、おもいに、こたえて、くれた、あかし、だった。
学園の、なまえも、あたらしくなった。
『ルミナス・アーカイブ』
すべての、ルミの、きおく、と。
すべての、ひとの、おもい、が。
たくわえられる、ばしょ。
過去も、現在も、未来も。
ひかりも、かげも。
——すべてを、うけいれ。
つぎの、せだい、へと、つないで、いく、ばしょ。
その夜。
寮のへやの、きれいに、片づけられた、机のうえで。
しるふぁは、新しい、日記の、ページを、ひらいた。
最初の、ページ、だった。
机のはしでは、ピコが、きん色のつばさを、たたんで、しずかに、しるふぁを、見あげている。
机の、おくには、おかあさんからの、ふるい、てがみが、たいせつそうに、たてかけて、あった。
ランプの、やわらかな、ひかりの、なかに、ペンが、紙を、すべる、おとだけが、していた。
「おかあさんへ。
きょうから、わたしは、——
あたらしい、日記を、はじめます。
ぜんぶの、きおく、は、まだ、もどって、いません。
たぶん、これからも、ぜんぶは、もどらない、と、おもう。
でも、ね、おかあさん」
しるふぁは、ペンを、すこし、とめた。
そして、しずかに、つづけた。
「おかあさんからの、てがみを、よみました。
巫女が、まいにち、いのちの、ひかりを、すこしずつ、ルミネットに、わたして、いる、こと。
そして、——
こたえ、なんか、なくても、いい、って、いう、こと」
「『ほんとうに、そうかな?』、と、まいにち、じぶんに、きく、こと、が、——
いきる、こと、なんだ、って」
「わたしは、ね、おかあさん」
「いまも、まだ、——『ほんとうに、そうかな?』を、まいにち、じぶんに、きいて、います」
「『巫女は、ひとりで、いのち、を、すりへらすしか、ないのかな』、——『ほんとうに、そうかな?』」
「『せかいの、ふあんは、だれか、ひとり、に、おしつけなければ、ならないのかな』、——『ほんとうに、そうかな?』」
「『うんめい、だから、しかたない、って、あきらめなきゃ、いけないのかな』、——『ほんとうに、そうかな?』」
「こたえは、まだ、ぜんぶ、でてない」
「でも、もう、ね、——
ひとりで、こたえを、さがして、いない、よ」
「ティナちゃんと、リヴィアさんと、リュシア先輩と、アリアさんと、ノエルさまと、セリア会長と。
そして、ティリアと。
それから、——
すこし、はなれた、ベンチで、しずかに、みまもって、くださって、いる、アウレリアさまと、ルーナさまと」
「みんなで、いっしょに、——
『ほんとうに、そうかな?』を、かんがえつづけて、いきたい、です」
「——わたしの、いのち、も、いっしょに、わけあって、いきたい、です」
ペンダントが、しずかに、きん色に、ひかった。
その、ひかりの、なかに——ほんの、一しゅん。
わかき日の、おかあさんが、ペンを、にぎっている、うしろすがたが、うかんだ。
それは、いま、ペンを、にぎっている、しるふぁ、じしんの、うしろすがたと、そっと、かさなって。
ひとつの、まっすぐな、せなかに、なって、しずかに、ひかりに、とけた。
しるふぁは、ペンを、いっしゅん、とめて。
最後の、一ぎょうを、しずかに、かきくわえた。
「ありがとう、おかあさん。
——わたし、これからも、まよい、ながら、すすみます。
そして、いっしょに、まよって、くれる、なかま、と。
きっと、だいじょうぶ。
——だいすき、だよ、おかあさん」
よがあけた。
あけ方の、学園の、中庭に、朝もやが、やわらかく、たちこめて。
すみきった、きん色の、はるの、あさ光が、さしはじめる。
あちこちで、ルミたちが、ぴぴっ、と、ないていた。
しるふぁは、にっこり、わらって、あるきだした。
となりに、ティリア。
そして、なかまたち、と、いっしょに。
とおくの、ベンチから。
アウレリアさまと、ルーナさまが、しずかに、てを、ふって、いらっしゃる。
しるふぁも、てを、ふりかえした。
あたらしい、せかいへ。
さいこうの、えがおで。
ピコが、ぴぃっ、と、ないて、あおい、そらへ、とびたった。
ティリアの、肩の、ちいさな、しろい、ふたごの、とり、も、つばさを、ひろげて、ピコの、よこに、ならんだ。
きん色のひかりが、おを、ひいて——
どこまでも、どこまでも、ひろがって、いく。
それは、おわり、では、なくて。
はじまりの、ひかり、だった。
——そして、しるふぁは、きょうも。
ちいさな、ちいさな、こえで、じぶんに、きいて、いる。
『ほんとうに、そうかな?』
と。
そのちいさな、といが、つづくかぎり——
このせかいは、きっと。
まいにち、すこしずつ、あたたかく、なって、いく。
そして、そのといを、よこで、しずかに、きいて、くれる、ひとが、いるかぎり。
そして、その、といを、いっしょに、になって、くれる、ひとが、いるかぎり。
——このせかいは、どこまでも、どこまでも、つながって、いく。
——Luminus Archive、完——