EPISODE 01

ひかりをはこぶ小鳥と、わたしの小さな一歩

Luminus Archive
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背景 丘のうえの小さな木造の家。庭に花壇、井戸、水をのみにくる小鳥の陶器の皿。
照明 夕暮れ前。空は淡いオレンジ。
BGM 木製リコーダーとハープ。やさしく古めかしい旋律、小音量。
SE 風のそよぎ。遠くで鳥の声。

丘のうえの小さな家。しるふぁは、おばあちゃんと二人で暮らしていた。

町から少し離れた、静かなところ。庭には花が咲いていて、朝には小鳥が水を飲みにやってくる。

しるふぁは、あまりおしゃべりが得意ではない。お友達もすくない。でも、花の世話をしたり、小鳥にパンくずをあげたりしているときが、いちばん好きだった。

「しるふぁ、お茶がはいったわよ」

「……はい、おばあちゃん」

しるふぁの首には、お母さんの形見のペンダントが下がっている。銀色の、小さな雫のかたち。

お母さんは、しるふぁが小さいころにいなくなってしまった。どうしていなくなったのか、おばあちゃんは教えてくれない。

——ただ、ときどきこう言う。

「お母さんはね……いちばん大切なものが、いつも見えていた人だったのよ」

しるふぁには、その言葉の意味が、まだよくわからなかった。

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SE じょうろから花壇へ、水がそそがれる「しゃわ……」という音。

その日の夕方。

庭の花に水をあげていたしるふぁは、羽をけがした小鳥が草のかげで震えているのを見つけた。

SE じょうろを置く、ことん、という音。

「……あ」

しるふぁは、そっとしゃがんだ。

手をのばそうとして、やめた。怖がらせてしまうかもしれない。

少しのあいだ、じっと見つめた。

小鳥も、しるふぁを見つめていた。

「……だいじょうぶ。こわくないよ」

やっと、小鳥はしるふぁの指にとまった。しるふぁは、その小さな体をそっとすくいあげた。

——そのときだった。

照明変化 空のオレンジが、一段ふかくなる。雲のふちに金色が差す、あの短い時間帯。
SE 鈴の音のような、小さな「ちりん」という澄んだ音。
エフェクト ペンダントがふっと淡い光をこぼす。まるい光の粒が、ふわり、ふわり。

胸もとのペンダントが、ふわっと、淡い光をこぼした。

「え……?」

光の粒が、ぽろぽろとこぼれおちる。その粒が、しるふぁの手の中でくるくると回って——

ぴぃっ。

小さな、光でできた小鳥になった。

しるふぁは息をのんだ。

光の小鳥は、しるふぁの肩にちょこんととまり、ほっぺにすりすりと顔をよせてくる。

「あなた……どこから……?」

光の小鳥は、しるふぁの目をのぞきこんだ。

その目は、なんだか、ずっと前から知っている誰かに会えたような、そんな目だった。

しるふぁは、この子を「ピコ」と名づけた。

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背景 居間。丸い木のテーブル、ほやのついたランプ。壁に色あせた家族写真(顔は影でよく見えない)。窓のそとは藍色、星がひとつふたつ。
照明 ランプのあかりだけ。天井の梁に大きな影。
BGM ピアノとチェロのゆっくりした二重奏。ささやき声より少し大きいくらい。
SE 薪ストーブの、ぱちっ、という音。

夜。

おばあちゃんは、しるふぁの肩にとまっているピコを見て、ほんの少しだけ、さびしそうに笑った。

「……そう。あなたのところに来たのね」

「おばあちゃん、この子、なに……?」

おばあちゃんはお茶を一口のんで、ゆっくりと話しはじめた。

「ルミ、っていうの。光の、ちいさな友だち。……お母さんと、ずっと一緒にいた子の、子どもよ」

「お母さんの……」

「お母さんはね、あの学園にいたの。セント・ルミナス学園。いろんな子が、ルミと一緒に勉強するところ」

しるふぁは、ペンダントをぎゅっとにぎった。

——お母さんのいた場所。

——お母さんが見ていた景色。

気がつくと、しるふぁは顔をあげていた。

「おばあちゃん。わたし……学園に行きたい」

SE 薪ストーブが、ぱち、と鳴る。風が窓をそっと叩く音。

おばあちゃんは、しばらく目を閉じて、何かを考えていた。

やがて、しずかにうなずいた。

「……いってらっしゃい」

そしてこう、付けくわえた。

「しるふぁ。ひとつだけ、おぼえておいてね」

「……うん」

カメラ しるふぁの横顔にゆっくり寄る。ランプの光が片頬を照らし、もう片方は影。

「みんなが正しいって言うことでも、『本当にそうかな?』って、自分の心に聞いてごらんなさい。
お母さんは、いつもそうしてた人だから」

しるふぁは、その言葉を、胸のおくにそっとしまった。

意味はまだ、わからなかった。でも、大事な言葉だということは、わかった。

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背景 朝もや。麦畑のうえを白い霧が流れる。地平線に朝日がのぼりかけ。空は薄紅、雲は金色。丘からのびる一本の細い道。
BGM 「はじまりのうた」ハープとリコーダー。1話でもっとも希望的な旋律。
SE 朝の鳥のさえずり。露にぬれた草を踏む、さくっ、という足音。

次の朝。

小さなカバンをひとつ持って、しるふぁは家を出た。

ピコは肩にとまって、そわそわしている。

ふり返ると、おばあちゃんが手をふっていた。

「……いってきます」

歩きだして、少しだけ立ち止まる。

エフェクト 胸のペンダントが朝の光をうけて、ふわっと淡く光る。光のなかに、手をふるおばあちゃんの姿が映る。ただし遠目とは違う——もう片方の手で、そっと目もとをぬぐっている。

胸のペンダントが、朝の光を受けて、ふわっと淡く光った。

その光の中で、しるふぁには、ほんの一瞬——

手をふるおばあちゃんの姿が、涙をこらえているように見えた。

いつものおばあちゃんの笑顔の、奥にあるもの。

表では見えない、ほんとうのきもち。

しるふぁは、少し胸がいたくなった。

でも、前を向いた。

「……ピコ、いこう」

SE ぴぃっ。
カメラ しるふぁの後ろ姿。肩のピコ。朝日に照らされた一本道。地平線のむこうが金色に輝く。
BGM クレッシェンド。最後の一小節でやさしく収束。

ぴぃっ、とピコが鳴いた。

まるで「だいじょうぶだよ」と言っているみたいに。

お母さんが歩いたかもしれない道を、

今度は、しるふぁが自分の足で歩いていく。

小さな、けれどたしかな一歩だった。

フェードアウト 
——第1話 つづく——