VOL.10 — ALPHA RELEASE

言葉にできる喜びを、
あなたの手に

はじめに——ついに、公開の日

長く温め続けてきたツールを、ようやく世に送り出せる日が来ました。

本日、VN Studio アルファ版(v0.65)Booth にて無償配布開始します。 構想から、設計、実装、そして解説コンテンツの作り込みまで——。 この小さなツールには、数え切れないほどの「こうあってほしい」が詰まっています。

自分の想いを、言葉にして伝えられる喜び。
そのささやかな体験を、このツールを通じて届けたい。

今回は配布開始の節目として、これまで語ってきた Vol.0 から Vol.4 までの想いを、あらためて振り返らせてください。

第1章:原点——なぜ、今このツールを作るのか

Vol.0 で語った原点は、 「まるでiPadでお絵描きをするように、ゲームを作りたい」という素朴な願いでした。

現代のゲームエンジンは強力です。けれど、ひとつの物語を形にするまでに、 クリエイターが向き合わなければならないものが多すぎる。 画面の構成、技術的な制約、無数の設定項目——。 それらに気を取られているうちに、本当に描きたかったはずの「想い」が 薄まってしまう。そんな場面を、私は何度も目にしてきました。

道具が複雑になるほど、想いは遠ざかる。
だから、透明であるほどいい。

制約の中でこそ創造性が花ひらく——。 VN Studio は、その信念のもとに生まれました。

第2章:設計——エディタとランタイムを切り離す

Vol.1 では、VN Studio のアーキテクチャについて語りました。 軽快な WPF エディタと、高品質な描画を担う Unity ランタイム。 この二つを完全に分離し、NamedPipe による JSON プロトコルで繋ぐ——。

なぜ、こんな回りくどい設計にしたのか。理由はひとつです。 クリエイターが「書く」瞬間に、余計な待ち時間を挟みたくなかった。 エディタは一瞬で立ち上がり、編集した行からワンクリックで即再生される。 「書く」と「見る」の間にある壁を、できる限り薄くする。

これは同時に、将来への布石でもあります。 同じエディタ、同じスクリプトが、Unity ランタイムだけでなく、 やがて Z80 搭載のレトロPCの上でも走るように——。 その遠い夢への第一歩が、この分離設計でした。

第3章:言葉——プログラムではなく、演出として書く

Vol.2 で紹介したスクリプトエンジンは、VN Studio の核です。

VNScript は、プログラミング言語ではありません。 演出の指示書です。

bg classroom
show sylfa smile
say しるふぁ "おはよう!"

読めば意味が分かる。書けばその通りに動く。 この「書いたまま、伝わる」という感覚は、 プログラマーでない方にとって、大きな解放になるはずです。

さらに RestoreState の仕組みにより、 スクリプトの任意の行から一瞬で再生を始められます。 数時間の物語の中盤を直したいとき、最初から再生し直す必要はない。 クリエイターの意識を、いま編集している一行にずっと留めておけるように——。

第4章:画面——映画のような奥行きを、単純なスクリプトから

Vol.3 では、レイヤーシステムの設計思想を語りました。

背景、前景、キャラクター、メニュー、演出エフェクト——。 映画のように奥行きのある画面を、数行のスクリプトから自然に組み立てられるよう、 複数の層で構成された背景スタックと、メインとメニューを分離するデュアルレイヤー構造を採用しました。

メニューを開いても、プレイヤーが見ていたシーンはそのまま完全に保持されます。 「戻る」を押したとき、ひとつの違和感もなくもとの物語へ帰ってこられる——。 その自然さを、仕組みが気づかれない形で支えることを大切にしました。

よい道具は、使っているときにその存在を忘れさせる。

第5章:素材——ただ、フォルダに置くだけ

Vol.4 で紹介したアセットローダーは、 このツールの「やさしさ」を象徴する仕組みです。

Unity の通常のワークフローでは、画像をプロジェクトに追加するたびに インポート設定が必要になります。けれど、創作の現場でそれは—— 想いを削り取っていく、余計な摩擦でした。

VN Studio では、Resources/ フォルダに画像や音声を置くだけで、 そのままスクリプトから参照できます。拡張子すら書かなくていい。 素材を差し替えたら、次のプレビューですぐに反映される。

「作りたい」と思った瞬間から、「見える」までの時間を、
可能な限りゼロに近づけたい。

それが、この仕組みに込めた願いです。

第6章:想い——言葉にできる喜びを、あなたへ

ここまで語ってきた設計の一つひとつは、すべて一点に向かっています。

クリエイターと、その想いの間から、余計なものを取り除くこと。

胸の中にある情景を、誰かに伝えたい。 心に浮かんだキャラクターの声を、形にしたい。 けれど、ツールの複雑さに阻まれて、 最初の一歩を踏み出せずにいる人がいる——。

そんな方にこそ、このツールを届けたかった。

自分の想いを、言葉にして伝えられる。
ただそれだけの、ささやかで、かけがえのない喜びを——
このツールを通して、感じてほしい。

そんな願いを込めて、VN Studio アルファ版をお届けします。

同梱内容と、これから

アルファ版には、以下が同梱されています。

  • VNStudio Runtime(Unity6 ベースのゲーム実行環境)
  • VNStudio Editor(WPF / .NET 9 ベースのスクリプトエディタ)
  • チュートリアルスクリプト(ナビゲーター「しるふぁ」と一緒に学ぶ全 4 章)
  • サンプルリソース(背景・キャラクター・BGM・SE)
  • はじめてのコマンドガイド(htmlページ)
  • コマンドリファレンス(htmlページ)
  • VNStudio画面の見方ガイド

動作要件は Windows 10 以降。 Tools ページから Booth へアクセスいただけます。

そして、次にめざす着地点は・・・ 正式版となるv1.0の公開 です。 Vol.5 以降で語ってきた Z80-V9990 ハイブリッドコンピュータ「XZ80」上での動作に対応し、 同じスクリプトがレトロPC の上でも息づく—— そのユニークなデュアルプラットフォーム体験をお届けする予定です。

おわりに——ここからが、はじまり

アルファ版の公開は、ゴールではありません。 むしろ、ここからが本当の始まりです。

このツールを触ってくださった方が、何かひとつ、物語を紡いでくださること。 そこで生まれた小さな想いが、誰かの心に届くこと。 そんな循環の、ほんの最初のひとしずくになれたらと願っています。

想いを記録にかえて、未来を紡ぐ——。
このスタジオの合言葉のとおり、
あなたの想いが、未来へと紡がれていきますように。

まずは、触ってみてください。 そして、よろしければ感想をお聞かせください。 あなたの一言が、このツールを次の段階へ連れて行ってくれます。

——しるふぁ工房